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ハンドレタリングがうまくなるコツは?人気作家bechoriさんが、紙の選び方や練習法を解説してくれました【インタビュー】
bechori (べちょり)
神奈川県横浜市出身のハンドレタリング作家。2016年からハンドレタリング・カリグラフィーの技法を独学で習得し、練習記録としてInstagramに投稿していた作品が人気を博す。2019年より、作家として本格的に活動をスタート。現在は精力的に創作活動を行うかたわら、ワークショップの開催や書籍・メディアでの執筆活動などを行っている。
Instagram:@bechori777
X:@bechori777
神奈川県横浜市出身のハンドレタリング作家。2016年からハンドレタリング・カリグラフィーの技法を独学で習得し、練習記録としてInstagramに投稿していた作品が人気を博す。2019年より、作家として本格的に活動をスタート。現在は精力的に創作活動を行うかたわら、ワークショップの開催や書籍・メディアでの執筆活動などを行っている。
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InstagramなどのSNSでさまざまな作品が公開されるなど、注目度が高まっているハンドレタリング。紙とペンさえあればはじめられる「手軽なアート」として、また自宅時間を有意義にすごすための「大人の趣味」として、取り組む方も増えているようです。しかし、いくら手軽とはいえそこは奥深いアート。作品づくりに苦戦している方、「もっと上手になりたい」という方もいるでしょう。
そこで今回は、人気のハンドレタリング作家であるbechori (べちょり)さんをお招きし、ハンドレタリングの魅力や文具の選び方、スキルアップの秘訣などをお聞きしました。完成までの「How To」を実践しながら解説してくださっているので、ぜひ最後までお読みください!
――レタリングに興味を持ったきっかけと、作家としてデビューするまでの経緯を教えていただけますか?
きっかけは海外のYouTube動画です。外国人の方が日本の万年筆を使ってアルファベットを書く姿に魅了され、レタリングに興味を持ちました。最初は「新しい趣味ができた」くらいの感覚でスタートしており、最初から作家になろうとは思っていませんでしたね。
――作家になろうと思ってはじめたわけではないんですね。
そうなんです。Instagramも自分用の練習記録として投稿していたのですが、アップし続けているうちにいつの間にか反響が増えて。あるときInstagramで「ワークショップやらないんですか?」というコメントをいただいたので試しに募集してみたら、2日で48名の枠が開始10分くらいで埋まってしまったんです(笑)。それが2018年頃だったと思います。
それと同時期に、あるメディアプラットフォームからレタリングのハウツー動画作成のお仕事もいただけるようになりました。そういった「追い風」がいろいろ重なって 好きなことを本業にしようと決意し、現在にいたります。
――当メディア『読む文具』の読者やSNSのフォロワーにも、ハンドレタリングやカリグラフィーに取り組んでいる方がいます。bechoriさんは、ハンドレタリングだけでなくカリグラフィーもやられているのですか?
今はハンドレタリングが活動のメインですが、カリグラフィーも独学で勉強しながらやっていた時期がありました。
――ハンドレタリングをメインにしたことにはなにか理由があるのでしょうか?
カリグラフィーは「西洋の書道」ともいわれており、厳格なルールやお手本が存在します。書体はさまざまですが、 書く道具や手順などにも厳格な決まり があったりして、「なんでも自由に描く」という感じではありません。
それに対し、「ルールは最低限、みんな好きに描いちゃおうよ」というのがハンドレタリング。なにをどう描いても自由です。私は「もっといろんな色を使いたい」「もっとテンションを上げて描きたい」「もっと気楽に好きなデザインを追求したい」と思っていたので、ハンドレタリングに魅力を感じるようになりました。
きっかけは海外のYouTube動画です。外国人の方が日本の万年筆を使ってアルファベットを書く姿に魅了され、レタリングに興味を持ちました。最初は「新しい趣味ができた」くらいの感覚でスタートしており、最初から作家になろうとは思っていませんでしたね。
――作家になろうと思ってはじめたわけではないんですね。
そうなんです。Instagramも自分用の練習記録として投稿していたのですが、アップし続けているうちにいつの間にか反響が増えて。あるときInstagramで「ワークショップやらないんですか?」というコメントをいただいたので試しに募集してみたら、2日で48名の枠が開始10分くらいで埋まってしまったんです(笑)。それが2018年頃だったと思います。
それと同時期に、あるメディアプラットフォームからレタリングのハウツー動画作成のお仕事もいただけるようになりました。そういった「追い風」がいろいろ重なって 好きなことを本業にしようと決意し、現在にいたります。
――当メディア『読む文具』の読者やSNSのフォロワーにも、ハンドレタリングやカリグラフィーに取り組んでいる方がいます。bechoriさんは、ハンドレタリングだけでなくカリグラフィーもやられているのですか?
今はハンドレタリングが活動のメインですが、カリグラフィーも独学で勉強しながらやっていた時期がありました。
――ハンドレタリングをメインにしたことにはなにか理由があるのでしょうか?
カリグラフィーは「西洋の書道」ともいわれており、厳格なルールやお手本が存在します。書体はさまざまですが、 書く道具や手順などにも厳格な決まり があったりして、「なんでも自由に描く」という感じではありません。
それに対し、「ルールは最低限、みんな好きに描いちゃおうよ」というのがハンドレタリング。なにをどう描いても自由です。私は「もっといろんな色を使いたい」「もっとテンションを上げて描きたい」「もっと気楽に好きなデザインを追求したい」と思っていたので、ハンドレタリングに魅力を感じるようになりました。
――デザイン性や自由度の高さがハンドレタリングの魅力なんですね。
作者の数だけスタイルがありますし、自分にしか描けない表現や書体を確立することも可能です。ハンドレタリングはペン1本、紙1枚でもはじめられるので、気軽に取り組みやすいのもいいところですね。
ただ、ハンドレタリングを追求するうえではカリグラフィーの技術や知識が役に立ったりもします。私のワークショップでもカリグラフィーに関する最低限のルールを必ずお伝えするようにしていますし、カリグラフィーを学ぶことはムダではありません。
――好きな書体などはありますか?
「このフォントが好き」といった特定の書体はあまりありません。ですが、規則性のある書体には美しさを感じますし好きですね。フリーハンドで描いたのに、「印刷した文字みたい」と勘違いされるのがうれしいです(笑)。
作者の数だけスタイルがありますし、自分にしか描けない表現や書体を確立することも可能です。ハンドレタリングはペン1本、紙1枚でもはじめられるので、気軽に取り組みやすいのもいいところですね。
ただ、ハンドレタリングを追求するうえではカリグラフィーの技術や知識が役に立ったりもします。私のワークショップでもカリグラフィーに関する最低限のルールを必ずお伝えするようにしていますし、カリグラフィーを学ぶことはムダではありません。
――好きな書体などはありますか?
「このフォントが好き」といった特定の書体はあまりありません。ですが、規則性のある書体には美しさを感じますし好きですね。フリーハンドで描いたのに、「印刷した文字みたい」と勘違いされるのがうれしいです(笑)。
――bechoriさんは普段、ハンドレタリングにどういった筆記具を使っているのでしょうか?
強弱のついた文字を描きたいときは筆ペンを使いますね。筆ペンって本当にいろいろなメーカーからたくさん種類が出ているのですが、マルマンだと『リラ アクア・ブラッシュ・デュオ 』という筆ペンをよく使っています 。
――ガラスペンなどの「つけペン」も使われているとお聞きしました。サインペンや筆ペンといった筆記具とつけペンを使う割合はどれくらいですか?
つけペンを使うのは、サインペンや筆ペンとは違った色味がある万年筆のインクや水性用のインクを使って描くときですね。割合は半々ぐらいですが、ワークショップの場合は「インクを使って描いてみたい」という方が結構多いのでつけペンのほうが多いかもしれません。
強弱のついた文字を描きたいときは筆ペンを使いますね。筆ペンって本当にいろいろなメーカーからたくさん種類が出ているのですが、マルマンだと『リラ アクア・ブラッシュ・デュオ 』という筆ペンをよく使っています 。
――ガラスペンなどの「つけペン」も使われているとお聞きしました。サインペンや筆ペンといった筆記具とつけペンを使う割合はどれくらいですか?
つけペンを使うのは、サインペンや筆ペンとは違った色味がある万年筆のインクや水性用のインクを使って描くときですね。割合は半々ぐらいですが、ワークショップの場合は「インクを使って描いてみたい」という方が結構多いのでつけペンのほうが多いかもしれません。
――――「これからハンドレタリングやってみたい」と思ったとき、ペン以外にそろえるべき文具・道具はありますか?
……「紙」ですね!紙がなければ文字が描けません(笑)。
あと、自分が描きたい文字をイメージできるお手本があるとはじめやすいです。「描きたいけどなにを描いたらいいかわからない」という方もいますが、まず「この文字を描きたい」を明確にし、「それを描くにはどんな文具・道具が必要か」を考えるほうが入りやすいと思います。
――カリグラフィーでは定規を使うと聞いたことがあります。ハンドレタリングでも定規は必要ですか?
カリグラフィーではガイドラインを引いたり斜めに罫線入れたりするので、そのために定規を使います。ハンドレタリングでは、定規を使っても使わなくてもどちらでも構いません。
――ハンドレタリングに適した紙はありますか?紙選びでこだわっているポイントがあれば教えてください。
紙は、「どの筆記具で描くか」で変えています。例えば、筆ペンやマーカーといった筆記具を使ってしっかり描きたいのであれば、厚めで表面に「シボ」とよばれる凹凸がある水彩紙や画用紙より少し表面がツルツルしている薄めの紙のほうがいいですね。
――筆ペンやマーカーで描く場合、どういった紙を使われているのですか?
……「紙」ですね!紙がなければ文字が描けません(笑)。
あと、自分が描きたい文字をイメージできるお手本があるとはじめやすいです。「描きたいけどなにを描いたらいいかわからない」という方もいますが、まず「この文字を描きたい」を明確にし、「それを描くにはどんな文具・道具が必要か」を考えるほうが入りやすいと思います。
――カリグラフィーでは定規を使うと聞いたことがあります。ハンドレタリングでも定規は必要ですか?
カリグラフィーではガイドラインを引いたり斜めに罫線入れたりするので、そのために定規を使います。ハンドレタリングでは、定規を使っても使わなくてもどちらでも構いません。
――ハンドレタリングに適した紙はありますか?紙選びでこだわっているポイントがあれば教えてください。
紙は、「どの筆記具で描くか」で変えています。例えば、筆ペンやマーカーといった筆記具を使ってしっかり描きたいのであれば、厚めで表面に「シボ」とよばれる凹凸がある水彩紙や画用紙より少し表面がツルツルしている薄めの紙のほうがいいですね。
――筆ペンやマーカーで描く場合、どういった紙を使われているのですか?
私の場合、筆ペンやマーカーなら『キャンソン XL マーカー パッド 』の一択!これまでいろいろな紙を試してきましたが、キャンソンのXLは他の紙よりペンの運びが滑らかなので、描き心地がとてもいいんです。コピー紙のようなインクの裏抜けもないし、耐久性もあってすごくバランスがいい紙だと思います。
――つけペンや万年筆の場合はどういう紙がよいのでしょうか?
『ニーモシネ 』というブランドのノートで使われている紙が一番好きですね。真っ白なので発色もいいし、つけペンや万年筆と相性がいいんです。裏に色がにじんでしまうという薄い紙特有の心配も『ニーモシネ』にはありません。表面がすごくツルツルしていて、摩擦や引っかかりを感じないのも高評価ポイントです。
――マルマン製品をよく使われているんですね。
そうですね!とくに筆ペンで描くときは絶対にマルマンの紙を使います。インクと筆を使って少しイラストっぽい文字を描くときは、『図案スケッチブック』や『キャンソン XL』などの画用紙を使ったりもします。
――マルマンの紙について、共通する魅力などはありますか?
耐久性やインクの裏抜けなどの点で、品質の安定感がずば抜けていると思います。そして、製品のバリエーションが豊富なこと、だいたいの紙の種類がそろっているところも魅力です。
――ハンドレタリングでは意外に「紙選び」が重要なんですね。
けっこう皆さん「筆記具」のほうに目が行きがちなのですが、実は「紙」がとても大事なんですよ。どんなに高級な筆記具を使っても、紙と合っていなければその筆記具の魅力や特性は活かしきれません。これって、すごくもったいないですよね。ワークショップの参加者の方にも、「紙にはお金を惜しまないで!」「自己投資だと思って、いい紙を使ってみてください!」とお伝えしています。
――練習のときも「いい紙」を使うべきでしょうか?
理想をいえばそうですね。適した紙を使わないと変な描き癖がついてしまうかもしれないので。私は描き損じた紙を捨てずにとっておき、裏紙として練習やウォーミングアップに使っています。そうすればムダが減りますから。ちなみに、練習ではマルマンの『レポートパッド 無地 』や『レポートパッド 方眼罫 』をよく使っています。
耐久性やインクの裏抜けなどの点で、品質の安定感がずば抜けていると思います。そして、製品のバリエーションが豊富なこと、だいたいの紙の種類がそろっているところも魅力です。
――ハンドレタリングでは意外に「紙選び」が重要なんですね。
けっこう皆さん「筆記具」のほうに目が行きがちなのですが、実は「紙」がとても大事なんですよ。どんなに高級な筆記具を使っても、紙と合っていなければその筆記具の魅力や特性は活かしきれません。これって、すごくもったいないですよね。ワークショップの参加者の方にも、「紙にはお金を惜しまないで!」「自己投資だと思って、いい紙を使ってみてください!」とお伝えしています。
――練習のときも「いい紙」を使うべきでしょうか?
理想をいえばそうですね。適した紙を使わないと変な描き癖がついてしまうかもしれないので。私は描き損じた紙を捨てずにとっておき、裏紙として練習やウォーミングアップに使っています。そうすればムダが減りますから。ちなみに、練習ではマルマンの『レポートパッド 無地 』や『レポートパッド 方眼罫 』をよく使っています。

「ハンドレタリングがもっとうまくなりたい」という方のために、bechoriさんが作品のクオリティを高めるためのアプローチを実践解説してくれました。この章では、具体的な練習方法と完成までの流れを画像とともに紹介します!
文字は線の集合体です。なので、いきなり本番に臨むのではなく、いろいろな線を描く練習をしてください。
書体によって少し数は異なるのですが、「基本ストローク」とよばれる文字を構成するベーシックな線が10個程度あります。まずはひたすらその練習。今回使用する筆ペンで描く際は、筆圧をかけたり抜いたりして線の強弱をつくるのに慣れてくると うまくストロークが描けるようになります。アルファベットの大半を構成している基本ストロークを描けるようになるのが、上達への第一歩です。
書体によって少し数は異なるのですが、「基本ストローク」とよばれる文字を構成するベーシックな線が10個程度あります。まずはひたすらその練習。今回使用する筆ペンで描く際は、筆圧をかけたり抜いたりして線の強弱をつくるのに慣れてくると うまくストロークが描けるようになります。アルファベットの大半を構成している基本ストロークを描けるようになるのが、上達への第一歩です。
STEP1
書きたい文字に適した紙とペンを用意します。今回使用したのは、『キャンソン XL マーカー パッド』と『リラ アクア・ブラッシュ・デュオ』です。
普段から「ゆっくり文字を書くこと」を意識しましょう。書体にもよりますが、ハンドレタリングでは普段よりかなり遅くペンを走らせて文字を描きます。この「ゆっくり」に慣れていない方が圧倒的に多く、皆さん苦戦されているようです。気持ちを落ち着かせてひとつずつ丁寧に文字を書くこと。それを日頃から意識できるといいのかなと。
また、罫線入りの紙で練習するのもひとつのやり方です。おすすめなのは、方眼罫やドット罫の紙を使った練習です。それによって、文字のサイズをそろえる感覚をつかみやすくなります。
また、罫線入りの紙で練習するのもひとつのやり方です。おすすめなのは、方眼罫やドット罫の紙を使った練習です。それによって、文字のサイズをそろえる感覚をつかみやすくなります。
「かわいい」「おしゃれ」といった印象を演出するテクニックのひとつにグラデーションがあります。技法はわりと簡単で、筆先を少しインクにひたしておいたペンを使って描くだけ。最初はひたしたインクの色からはじまりますが、描いているうちにそのインクの色が少しずつ抜けてもとの筆ペンの色に戻っていくので、その原理によってグラデーションを表現できます。誰でもできる手法なので、ぜひ試してみてください。
作品ができあがったら、客観的に振り返ってみましょう。文字と文字の間が不ぞろいだったり、まっすぐ書いているつもりが右上がりになっていたりすることもあります。はじめから完璧を目指すのは難しいと思いますが、「なぜうまくいかなかったか」を分析できると素晴らしいですね。まずは、描いた文字を自分でよく観察することが重要です。
――うまくなるための実践解説、ありがとうございました。最後に、これからハンドレタリングをやりたい方へのメッセージをお願いします。
繰り返しになってしまいますが、「なんとなくやりたい(描きたい)」と思いながら取り組むよりも、「このような文字を描きたい」という具体的なイメージを持つことが大切です。最近ではハンドレタリング関連の書籍も増えていますし、インターネットで調べたらいろんな情報や動画が出てくると思います。そういったコンテンツを使って情報収集してみてください。
そして、最初から難しそうな文字を選ぶのではなく、「とりあえず自分でも描けそうなもの」から真似してみるといいかもしれません。ハンドレタリングに細かいルールや作法はないので、ぜひ楽しみながらチャレンジしてみてくださいね。
繰り返しになってしまいますが、「なんとなくやりたい(描きたい)」と思いながら取り組むよりも、「このような文字を描きたい」という具体的なイメージを持つことが大切です。最近ではハンドレタリング関連の書籍も増えていますし、インターネットで調べたらいろんな情報や動画が出てくると思います。そういったコンテンツを使って情報収集してみてください。
そして、最初から難しそうな文字を選ぶのではなく、「とりあえず自分でも描けそうなもの」から真似してみるといいかもしれません。ハンドレタリングに細かいルールや作法はないので、ぜひ楽しみながらチャレンジしてみてくださいね。